私がすぐにmojoを手放した理由
言わずと知れたchordのポータブルアンプ「mojo」。発売直後は値段に対する(写真で見る)デザインに「何だこの玩具は」とか思っていましたが、価格を超える高音質で瞬く間に浸透。あっという間に「定番」となったポータブルアンプです。今では価格も落ち着き、50000円を切ることも多いですね。
購入理由はオーバーサンプリング
私は音楽配信サービスを聞くことが多いので、320kbpsのMP3を少しでも良い音で聴けないかと考えたのが、ことの始まり。
mojoのオーバーサンプリング機能は飛び抜けていて、簡単に言うと「どんな音源でも良い音にしてしまうぜ!」という気概。Spotifyで聴いている数多の音楽を全部CD音源で揃えると大変なことになりますからね。
手放した理由もオーバーサンプリング
矛盾しているかもしれませんが、私の要求にmojoはしっかり応えてくれました。50000円近い価格で買っただけの甲斐はあります。確かに全ての音源が濃く滑らかになりました。でもこれが手放す理由に…。
クラシックやジャズでは気付かなかった違和感
これは私の聴き込み不足と言うこともあるのでしょうが、クラシックやジャズは音場こそ広くないものの全ての奏者がベストコンディションだったのではないかと思えるほど良く聴こえ、大満足していました。特に独奏は絶品だと。
意外とJ-POPやアニソンで気付いた違和感
一方、J-POPやアニソンでは幾つかの曲で違和を感じるようになりました。ザックリ言うと「こんな声だっけ?」という歌い手への違和感。
濃く滑らかな音のmojoなので、これが所謂「どんなヘッドホン・イヤホンで聴いても全部mojoの音になる」と言われる所以なのかなと、この時点で結構な違和はありつつも、とりあえず納得しながら聴いていました。
結局好きなジャンルで気付くmojoの「間違った訂正能力」
違和感を確信に変えたのはhideの曲でした。私はXファンでhideファンでもあるので、当然のように何度も鳴らしてはいたものの、mojoに変えてから急激にhideの曲と縁遠くなっていたんです。少なくとも積極的に聴きたいとは思えなくなりました。なお、こちらは音楽配信サービスではなく、全曲CD音源です。
ファンに喧嘩を売るつもりはありませんが(私もファンなので)、hideはボーカリストとしてもギタリストとしてもテクニック一本で戦うタイプではありません。それでも今聴いても古く感じないほどの圧倒的なセンスを持っていました。
それは本当に楽曲の些細なところにまで及んでいて、例えば「歪み」にしてもhideの場合は全力でやると言うよりは強すぎず弱すぎない絶妙な加減で収録されています。
「どんな音源でも良い音にしてしまうぜ!」という気概(忠実とは言っていない)
結局のところ他の環境(DAC、アンプ)と比べてみると、mojoはそういう雑妙な歪みや音の恐ろしく僅かででも意図的なズレ、ボーカルの喉の鳴りなどを全て「良い音に訂正」してしまっていたんです。
センスやユニークさを訂正されちゃったhideの曲に魅力を感じないのは当然のことでした。そういうものの対極にいるのがhideですから。
最近のヒット曲でもわかりやすい「訂正」が。
そうしてmojoの「訂正」を確認するように幾つかの曲を聴いている中で、面白い訂正のされ方をしている曲を発見しました。DAOKO×米津玄師の「打上花火」です。アニメ映画の曲だから結局アニソンですね、はい。
個人的に、この曲は演奏が支える男女二人のボーカルが「若々しくリアル」であるところがポイントで、ただ歌がうまい人がうまく歌ってもきっとこの「甘酸っぱい青春の感じ」は出ないと思います。(ちなみにカップリング曲でのDAOKOさんめちゃ上手いです)
これも絶妙な匙加減が重要なのですが、mojoさんは手加減無しで全力訂正してしまいます。若々しさが失われて大人の余裕が入ってきます。そうなるともう、打上花火のイメージからは大きく遠ざかってしまいます。
良い音にはなるけれど、原曲に忠実ではない。
結局のところ、私のmojoに対する評価はこれに尽きます。
音場が広いとか、中域が豊かとか、低域が響くとか、解像感が高いとか、そういう次元ではなく、mojoは音楽そのものを訂正してしまいます。
もちろんその結果「素晴らしい音」で鳴ることも多いのですが、でも私にはちょっとクセが強すぎました。
なお、これはライン出力でDACとして使用する場合であっても同じ処理がされてしまうため、DAC仕様に留めてアンプは別で…としても変わりません。むしろ音量を上げれば上げるほどmojoのクセが強く感じました。mojoのラインアウトは単なる音量MAXなので……。
結局使いどころを失って、手放すことに。
発売からそこそこ日が経っているにもかかわらず、mojoは今でも高い人気を誇る大定番ポタアンです。
しかし万人に受け入れられるかというと個人的には疑問符が付きます。購入を検討しているかたは、自分の聴く音楽のジャンルや特徴をよく考えた上で、購入したほうが良いと思います。