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病気や子育てについて書くつもりが、趣味の話が増えてしまった雑多ブログ。

【イヤホンレビュー】TRI i4

久しぶりの更新になります。ちょっとKnowlesのBAでボーカルを聴きたくなって評判の良い『TRI i4』に手を出してみました。久しぶりすぎてタイトル用の画像用意し忘れたよ……。

 

パッケージと本体外観


 箱はそこそこに高級感があり、付属品は充実している。
 本体は想像していたよりも小さく、ほとんどの人にとって耳への収まりに優れると思われる。TIN AUDIOのT3は『TRI i4』と同じ1DD+1BA(Knowles製)の構成なのだが形状はかなり異なる。
 アルミ合金製の小さな筐体に美しい色が乗り、実際に触れてみても明らかに上級品の造り。見た目での所有欲はかなり満たされるのではないかと感じる。とてもAmazonから7500円以内で買えるとは思えない。これに関しては「みんなSE535のプラスチックを思い出すんだ!」と言いたい。立った数年前、こぞってあれに何万も出していたんだよ。いや音は良いけど。見た目の高級感で言えば雲泥の差で『TRI i4』が上と言わざるを得ない。プラスチックのノズル折れたし。(何年も使ったので恨みがあるわけではない)
 ノズルと言えば『TRI i4』のノズルも折れた報告をTwitterで二件ほど見た。恐らくノズルの『返し』に引っかかって力がかかり折れてしまうのだと思う。個人的にも最初から付いていたイヤーピースを外すにあたって「あれ、なんか固いな」という感触があり慎重になった。

 

 参考までにTFZのT2GALAXY(カナル型として標準的なサイズかなと)と比べると小振りさがわかります。女性にもお奨め。

 


バランス


 低音域が少し多めのバランス。
 高域は控えめな鳴りで音域別にざっくりと順番を付けると【低音域≧中音域>高音域】で、Knowlesのバランスドアーマチュア(BA)ドライバよりもダイナミックドライバが前に出てきている印象。
 中華イヤホンのほとんどは低域過多なので、その中ではかなりフラット。人によってはカマボコと感じるかも。

 

低音


 キレこそほどほどで値段なりの印象だけれど、しっかり量感があるため不足感はない。もう少しベースの弦を感じる鳴りならベストという欲も出てしまうが、最近は評価基準がTAGOーSTUDIOさんの『T3-01』というヘッドホンになってしまったため、これはかなり厳しく評価していると思う。
 例えば老忠のLZ-A4などは発売当時20000円で売られていた機種であり今でも音場の広大さから愛用しているが、その低域と比べて『高くとも7500円』で買える『TRI i4』が劣る感じはない。同等と評価できると思う。
 最近の中華イヤホンでダイナミック一発と言えばTFZの印象があり同価格帯にT2GやMLEなどがあり比較しやすいが、さすがにダイナミック単品の出来では分離感などで少々分が悪い。
 しかし『TRI i4』にはダイナミックドライバだけでなくKnowlesのバランスドアーマチュア(BA)ドライバが乗っていて、ハイブリッド+多ドラ機が氾濫する現状であえて1DD+1BAのシンプルな『TRI i4』を選ぶ人はこちらが目的になるのではないかな、と思う。
 実際のところKnowlesと他社では同じBAと表記されて型番がそっくりでも価値は全く違う。KnowlesのBAドライバは音が滑らかで自然、妙なピークもなく繋がりも良い。(KZのBAドライバなどはピークがあるので若干尖った印象になり、それがKZの味にもなっている)

 

中音


 『TRI i4』のBAドライバは箱出しの時点で『中音域に関しては』非常に良い仕事をしている。エージングが全くされていないからか女性ボーカルが思いきり声を張ると僅かに音が割れる感じがあるものの、もの凄く気になるかと言えばそれほどでもない。むしろ宇多田ヒカルの『花束を君に』などボーカルが前面に出る曲では繊細で滑らかな表現が非情に心地よく、『TRI i4』の価値を示していると思う。男女問わずボーカルは艶があり表現力が豊か。
 自戒の念も込めて書くと『細かな声の掠れを拾って強調すると音の解像度が高いと感じてしまいがち』だけれど、『TRI i4』はその逆で『プロの声が持つ魅力をそのまま魅力的に表現する』イヤホンに感じられる。
 ということで箱出し直後でもかなりの好印象だったのに、二十四時間程度のエージングで更に激変。ボーカルはど真ん中ピシャリと定位して滑らかで繊細な表現力。弦楽器の表現力も豊かで奥行きがある。ボーカルが声を張っても耳に付くことなく、むしろ魅惑的。よく『女性ボーカル向き』と表現されるイヤホンがあるけれど、『TRI i4』に関してはやはり男女関係なく、女性ボーカルも男性ボーカルも艶があって非常に好印象。

 

高音


 箱出し直後は高音域はシンバルが控えめにシャンシャン鳴っている感じで、耳に刺さることは全くないが刺激が少し足りないとも言い換えられる。
 中高域になってしまうがエレキギターで歪みの効いた『ギュゥイーンッ』がただの『ギュィーン』になっている。語彙力とは一体。倍音(本来の周波数の倍数)の鳴りが足りないとこうなりがちなので、ここは高音域側の問題かなと感じる。
 アコースティックギターの響きは胴の響きが少し物足りなく感じる程度で弦の存在感はしっかりしている。
 少し物足りない優等生という感じだった箱出し直後の高域もエージングでそれなりに変化があって、『ギュゥイーンッ』が『ギュゥィーン』ぐらいにはなった。だから語彙力とは。

 

音場


 魅力的に広い。例えばダイナミックドライバ一発ではTFZ機に対して分が悪いと先述したが、同価格帯のTFZ機はほとんど隙間なく音場が凝縮されていて良くも悪くも音に距離感がない。全部近い。解像度と分離は良いから意識を傾けてしっかり聴けば小さな距離感の違いも感じられるのだけれど、『TRI i4』ではただゆったり聴いているだけで距離感が把握できる。
 特にBAが担当する中音域~高音域にかけて余裕があり、ボーカルが他の楽器に埋もれることなくしっかり浮き立つ。
 低域は少し明確でなくごちゃごちゃとなりがちであまり余裕はないが、量感はしっかり出ているので下支え感があると好意的に受け取ることもできる。ただこの低域が中高域を覆ってしまうと音の魅力も音場の広さも全て台無しになってしまう可能性があるので、あくまで重ならずに音を支える絶妙なバランスを保っている点はチューニングの技かと感じる。これ……中華イヤホンだよね……?

 

総評


 とりあえずポップスからロック・メタル、アニソン、声優曲にクラシック、ジャズ、吹奏楽など色々と聞いてみたが面白いぐらいに全てをそつなく鳴らしてしまう。
 難易度の高すぎる大編成クラシックを除けば苦手ジャンルはなさそう。エレキギターとベースに関してはもう一歩踏み込んで欲しいところで止まっている感があるものの、確実に値段以上の鳴りはしている。
 KnowlesのBAドライバが滑らかな音表現をするからか聴き疲れしにくい。最も秀でているのはピアノ曲だろうか。柔らかい音表現にとろけてしまいそうになる。それほど詳しいわけではないけれど、国産ならYAMAHAよりもKAWAIの印象が近い。
 10000円以内で『これ一本あれば大丈夫』というイヤホンはいくつかあるけれど、その中でも『上品で滑らかな音』を求めるなら『TRI i4』だと思う。
 もしセールやクーポンで5000円程度なら、2000円程度からのステップアップの対象にもなる。格安BAの音を抜け出したいという願望がある人には特にオススメしたい。
 逆に数万円の高級機を持っている人のサブや予備機としてもオススメできるレベルの仕上がりなので、そういう方向からの購入もあり。
 今回は付属ケーブルでの音確認になったけれど、銀メッキ系を使うと高域に派手さが増し音像がクッキリして更に良いかもしれない。