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病気や子育てについて書くつもりが、趣味の話が増えてしまった雑多ブログ。

上海問屋ヘッドホン(ベリリウム)が妖怪コスパで笑うしかない

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久しぶりにヘッドホンの話題です。

イヤホン界隈はKZの快進撃があり、お金のない中でもZST、ZS5、ZSR、ES3と次々につまみ食いしていますが(きっと今月中にZS10も届くでしょう…)、ヘッドホンは筐体やドライバが大きいこともあってか格安で手に入る高音質モデルは中々現れずの状況でした。

しかし今回取り上げるヘッドホンは……かなりのインパクトです。

 

 

 上海問屋のヘッドホンはベリリウム振動板で3000円以下になることも(通常時6000~8000円台)

上海問屋は掘り出し物的で色んな意味でユニークな商品を大量に取り扱う超有名店舗であり、ベリリウム振動板は本来高級機種に採用されるものです。

ベリリウムは高域の解像感に優れる素材なのですが、粉末のベリリウムには毒性があり加工するにはコストが嵩むという欠点があります。当然ですが加工後の毒性はありません。

 

私はセールで手に入れたので、送料込み2300円ほどでした。(クーポンも使用)

 

但しこのヘッドホン、巷では10000円でも安すぎると言われているほどです。

6000円台でなら割と普通に売られていますので、先に書いておきますが私は6000円でも全力で買いだと思います。(8000円台は定価ですが、最近は定価で売られているところを見たことがありません)

 

ベリリウムはコーティングであり、含有率も恐らく高くはない。

過度な期待は禁物です。こういう商品はスピーカーでも沢山見受けられますし、自作スピーカーに触れていれば常識のレベルです。マグネシウムとか。

こういう貴重な素材は純度100%に近付くと値段も音もとんでもないことになりますが、ある程度含有されていたりコーティング使用されているだけでも明確に音が違います(そしてそこそこ高い)

 

機種名はDN-914311

飾り気も何もありません。というかこれ、まんま型番です。

似たような型番でベリリウム振動板採用のイヤホンなどもあります。

 

開封の儀

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突然このサイズの段ボールが届いて焦った。長っ!

 

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開けてみると……。送料に関係してきそうだけど、丁度良いダンボールがなかったのだろうか。だがこの雑さが良い(?)

 

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白い汚れは最初から付着していたものである。この雑さが

 

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ハイレゾ対応なんです。意見を二分するハイレゾ論争ですけれど、同じ音質なら対応してないよりしてるほうが良いですよね。

 

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上から

 

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サイド

 

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中を開けると、メーカーロゴを刻印し忘れたんじゃないかという素っ気ない風貌。

 

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ハードケースのポーチは、無骨ながら悪くない。

 

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ドライバ部が回転しますので、旅のお供にも持ち運びやすいでしょう。

 

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想像以上に重厚感がある。

 

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イヤーパッドはレザー調で、ふっかふか。装着感は非常に良好。

 

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左右は内側で確認。

 

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暗くなってしまいましたがスライド幅は十分で、その上金属です。この価格なら絶対プラスチックだろうと思っていたので、嬉しいポイント。

 

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3.5mmステレオミニジャック。

【重要】このジャック、落とし込みの穴が非常に狭く、8mmあるかないかというところです。リケーブルに当たっては細い端子のものを選ぶか、ギリギリ入らない程度であればヤスリで穴を広げてしまったほうがいいかもしれません(自己責任です)

 

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シンプルな付属品。

 

音質について

さて、ケーブルを捨てる作業からはじめようか。

KZの付属ゴムゴムケーブルも酷いものですが、上海問屋DN-914311のケーブルもとんでもなく酷い。※再生環境との組み合わせや好みで付属ケーブルの方が良かった、ということもありえますので、本当に捨てちゃ駄目です。

試しに自作ケーブル(ベルデンの赤くて硬いやつ)に差し替えてみましたが、激変します。価値に直せば万単位で変わると言っても全く過言ではありません。しかしべらぼうに高いケーブルを買う必要はなく、2mで3000円ぐらいのもので十分です。

 

追記 1000円未満でそこそこグレードアップするケーブルがありました。

 

付属ケーブルでは、やや眠たい音。

低域が多めで、少しモワッとしています。

鳴っている音、解像感、素性が良いことは一聴して即座に理解できるレベルですが、とにかくポテンシャルを徹底的に殺したような音。

AKGのK701やK702をシルクのベールを一枚被せたような音と表現をする方がいますが、上海問屋DN-914311に関してはシルクよりは若干荒いベールを3枚ぐらい被せた感じです。

原因はケーブル。とにかく細く柔らかく頼りがない。この細さと柔らかさで高音質のケーブルがあればきっと世界中がぞっこんです。しかし現実にそんなケーブルはありません。

試しに普通のオーディオ用じゃない、ホームセンターとかで売ってるステレオミニケーブル(500円ぐらい?)を繋いでみたところ、それでもベールが一枚近く剥がされましたので、これ、本当に悪いと思います。※眠い音が好みの場合もありますし、尖った音のアンプをケーブルで和らげるには使える可能性もあるので、本当に捨てたら駄目ですよ! 二回目ですが!

 

これ、まともなケーブル付けたら○万円レベルなんじゃ。

ベルデンの自作ケーブルで聴くと、ベールが2枚剥がされた感じで全体域が明瞭になります。眠い音に華やかさを足した感じで、丁度良い塩梅だと思います。

※ベルデンその他の高品質ケーブルはAmazonなどで普通に買えます。家に半田ごてがあり、「なんか半田付けがしたいなぁ」と突然思うような人間じゃなければ、完成品を買ったほうが良いです。

あまりにも違いすぎるので、以下は全てベルデン88761にリケーブル後の評価になります。

 

帯域バランスは、低音寄り

  • 低域 5  ☆☆☆☆☆
  • 中域 4.5 ☆☆☆☆★
  • 高域 4  ☆☆☆☆

こんな感じでしょうか。しかしネットで言われているほど低域に寄っているとは感じませんでした。

 

帯域別の音の質は、中域~高域が優れる

  • 低域 4  ☆☆☆☆
  • 中域 5  ☆☆☆☆☆
  • 高域 4.5 ☆☆☆☆★

ベリリウム(コーティング)振動板の影響でしょうか。中域や高域は非常に繊細な音を鳴らします。分離も良く、これは2万円程度の価格帯ではそう味わえない音です。シルク調と言われるK701,702に迫るような感触があります。

但し開放型のすっきりあっさり感はありません。密閉型らしく濃い音です。加えて低域の量感がある分、印象的にはK701,702のほうがシルキーです。

しかしリケーブル後、更にイコライザで低域を削るとかなり似た印象に持って行くことは可能でした。あくまで「迫る」なので、上海問屋DN-914311のほうが幾分荒いところがありますが。

モニターに近い解像感を持っているのに完全なリスニングヘッドホンの音調とバランスというのは、高級機を除けばかなり珍しいのではないかと。

 

サ行の刺さりはほぼ皆無

全体的に当たりが柔らかく、キンキンと煩く鳴る印象はありません。

また低域が多めであることからか非常にふくよかな音で、やはりこの点からも余計な低域を盛っていないK701のすっきり感とは異なります。上海問屋DN-914311らしさというか、また違った良さ、厚みが中高域にも付加されています。

ならば低域がもうちょっとゴリゴリ鳴ってもいいんじゃかな、と思いますが、そうなってしまうと個性が消えるような気もしますので、難しいところです。

と言ってもロック・メタル系のベースはしっかり攻めてきますので、誇張していないだけかもしれません。

但しこれは数倍の値段のヘッドホンとの比較であり、余裕の1万円以下(それも私は2300円で買った)に求めるのは全くお門違いですが。

 

特筆すべきは中域。ボーカル表現は見事。

この上海問屋DN-914311において最も秀でているのは、中域の解像、分離、繊細さです。

男性ボーカルはより厚く魅力的に、女性ボーカルはしっかり芯を通しながらマイルドで上品に仕上がります。

よくモニター系ヘッドホンではブレス(息)の音がハッキリと聴き取れるものの、それはまるで粗探しをするようで(モニターとはそういうものですが)あまり心地良いものではありません。

上海問屋DN-914311は解像度が高いことからしっかりとブレスの音を鳴らすのですが、それが非常に魅力的な音であり、耳に付く感じがありません。

また、これは特にイヤホンのBA型ドライバに言えることですが、ピアノの音が針金のように硬い、神経質すぎる音になるケースが多々あります。例えばSE535もそれですし、安いものではKZのZST、ES3、ZS5など。

オーディオ業界全体で、解像度を求める余りに音が神経質になりすぎてはいないかという疑問があります。

その中で上海問屋DN-914311のピアノは中々に芯が太く、やはりヘッドホンである以上完全にリアルとは言えないまでも、非常に魅力的な鳴り方をします。

中域が充実しているためアニソンやJ-POPにも適していますが、特に苦手なジャンルというのはなさそうな印象です。

 

 

「個人的には」ケーブルさえ良ければ数万円レベル。

ケーブルが最初からベルデン並の高品質であれば、店頭50000円、ネット30000円でも他と十分比較できるかなと思います。

もちろん信頼あるメーカーロゴが必要ですが(笑)

※あくまで個人の感想です。その価格帯の高評価ヘッドホンでも、買ってみたら耳に合わなくて即行で売りに出すことはままありますので、やはり相性は大切です。

 

ケーブルを変えなくても、イコライザで激変。

イコライザで低域を軽く削ると、バランスが取れて全帯域の輪郭がハッキリし、見通しが良くなります。低域は量感を落として質を上げる感じで、正に激変です。

もちろんリケーブル後のイコライザ調整もありです。ただリケーブルで質自体は向上できているので、その後のイコライザ調整による変化は付属ケーブルの時ほど劇的ではありませんが。

私はイコライザ否定派です。大体の場合はイコライザを通すと妙な不自然さを感じるようになるのですが、上海問屋DN-914311では元が非常に柔らかい音だからか不自然さは感じませんでした。

もしくは、低域を控えめにしたほうがドライバに対して「正解」なのか。

この辺りは高いポテンシャルを活かせていない感があり、本気のオーディオメーカーに比べて詰めが甘い部分なのかもしれません。

明確にイコライザを使うべきだと判断したのはこれが初めてです。

ただ元のバランスも破綻するほど低音寄りというわけではないので、削る量は本当に少しで大丈夫です。

 

密閉型のため音場は広くない。定位も僅かに甘いか。

上海問屋DN-914311だけの問題ではないですが、開放型ヘッドホンと比べるとどうしても音場は窮屈になります。

しかし横方向にはそこそこ広く、健闘しているかと。

それでも縦は少し狭いか。

柔らかさの代償か定位が僅かに甘めでもあり、かっちりと固定されている感じではない。しかしこれは密閉型由来のものであったり、音の柔らかさの代償であったりするため、20000~30000円程度の機種だとすれば強く否定するほどの問題ではない印象です。

上海問屋DN-914311が6000円程度、セールなら3000円を切るヘッドホンであることを考えれば……リケーブルが3000円程度だとしても10000円でおつりが来るかもしれないのだから、この指摘はほぼ「いちゃもん」のレベルです。

でもこれぐらいしか明確な欠点が見つからなかったんです。

かなりリスニング寄りのバランスを取りながらシルキーで高解像度、刺さりもなしという万能な音ですので、あとはもう好みの問題や単純に密閉型が合わないというような問題にしか持って行けません。

ちなみに私は密閉型が大嫌いです。じゃあなんで買ったのかという話になってしまいますが、嫌いだけど密閉型を使う必要のある場面って結構多いんです。だから「買ってみるんだけれど、合わなくて使わなくなる。もっと良いものがないかと買って、また使わなくなる」の延々ループ。買った数は圧倒的に密閉型とカナル型イヤホンが多く、開放型はまだギリギリ片手で数えられる程度です。

 

K701と交代で聴いてみると

上海問屋DN-914311→K701 スッキリして見晴らしが良く圧倒的に耳へのストレスが減少。しかし音があまりに軽すぎるような気も。

K701→上海問屋DN-914311 音の重みが全く違い、一つ一つの音色に深さと余韻を感じます。しかしどうも耳への圧迫感が強く窮屈に押し込められた印象が。

 

もし上海問屋DN-914311とK701が似たような音だと思われてしまってはとんでもない誤解を招くことになってしまうので、念のため明言しておきますが、刺さりのなさや解像度、分解能といった基本的な部分で共通があるものの、二つの音色は一長一短で全くの別物、むしろ対照的ですらあります。

 

まとめ

長所

  • 驚異的なコストパフォーマンス
  • 解像感があり、繊細でありながら深い余韻を残す音
  • 密閉型としてはそこそこ横に広い音場
  • イコライザで自然に調整可能
  • 金属バンド、ふかふかのイヤーパッドなどは明らかに値段以上の品質

 

短所

  • 付属ケーブルが悪く、性能発揮にリケーブルが必須
  • 低音寄りだがゴリゴリのバッキバキではない。
  • 音場が縦に狭く、定位は若干甘い。
  • さすがに開封時点で○万円レベルの音ではない。
  • 【重要】リケーブル必須レベルなのにジャックが狭い(8mmあるかないか)

 

 

リケーブルが抜群の効果だったので、思い切って改造、バランス化したらまた飛躍的に音質が向上する可能性もあります。

こんなに面白いヘッドホンはGoldring DR150以来じゃないかな。

色々改造して使い続けた挙げ句、結局スライダーが折れてそれでも無理矢理使ってますから、DR150は人生レベルでの愛機です。

上海問屋DN-914311からはそういうレアな『面白さ』が伝わってくるので、これから鍛え甲斐がありそうです。